機能追加はどう決める?|顧客の要望をそのまま作らず判断する方法
はじめに
サービスを運営していると、
「この機能が欲しい」
「○○と連携してほしい」
「競合にはあるので追加してほしい」
といった要望が少しずつ集まってきます。
要望が複数届くと、
「これだけ言われているなら、作った方がいいのでは?」
と考えたくなります。
しかし、
顧客が欲しいと言った機能と、本当に解決すべき課題は同じとは限りません。
たとえば、
「CSV出力が欲しい」
という要望でも、
- Excelへの転記作業を減らしたい
- 手元にデータを保存しておきたい
- 競合にもあるので欲しい
- なんとなく便利そう
では、
背景にある問題がまったく違います。
この記事では、
顧客の機能要望をそのまま開発仕様にせず、
要望 → 背景課題 → 行動 → 代替手段 → 機能追加判断
の順番で整理する方法を解説します。
結論:機能要望は「答え」ではなく「課題を探る入口」
顧客から、
「○○機能が欲しい」
と言われたとき、
最初に考えたいのは、
「その機能を作るべきか?」ではありません。
まず確認したいのは、
「なぜ、その機能が欲しいのか?」
です。
たとえば、
「Slack連携が欲しい」
という発言だけでは、
- Slackから情報を探すのが大変なのか
- 転記作業が面倒なのか
- 転記忘れが起きているのか
- 単に連携機能が好きなのか
までは分かりません。
要望は、
顧客が考えた解決方法であることがあります。
そのため、
機能要望
↓
背景課題
↓
本当に解決したいこと
まで分けて考える必要があります。
まず「要望」と「課題」を分ける
機能要望を受け取ったら、
まずそのまま記録します。
たとえば、
「CSVで出力できるようにしてほしい」
なら、
要望:CSV出力
です。
ここで、
「Excel転記が大変なのだろう」
と勝手に補わないことが重要です。
顧客本人が、
「毎月Excelへ手入力しているので、
CSVで出せると助かる」
と話しているなら、
- 要望:CSV出力
- 背景課題:Excelへの手作業による転記
- 発生場面:月次報告
- 現在行動:画面を見ながらExcelへ入力
まで整理できます。
一方、
「CSVで保存できると安心」
だけなら、
背景は転記作業とは限りません。
データを手元に置きたい、
サービスへの依存を減らしたいなど、
別の目的かもしれません。
ただし、
本人が話していない理由まで推測してはいけません。
同じ機能要望でも背景は違う
たとえば5人が、
「エクスポート機能が欲しい」
と言っていても、
その中身は次のように違うことがあります。
| 利用者 | 発言の背景 |
|---|---|
| A | 月末の報告資料へ転記したい |
| B | データを手元に保存しておきたい |
| C | 毎日のExcel管理表への転記を減らしたい |
| D | 便利そうだが使う予定はない |
| E | 競合にもあるので、あった方がよさそう |
表面上は同じ要望ですが、
一つの「エクスポート需要」として同じ重みで数えるのは危険です。
まず要望の背景を整理したい場合は、
「機能要望分析」のAIフローを使うと、
要望・背景課題・利用場面・現在行動・未確認事項を分けて整理できます。
「欲しい」と「使う」は分ける
顧客発言を見るときは、
言葉の強さを混同しないことも重要です。
たとえば、
- 「あると便利そう」
- 「欲しい」
- 「あれば使う」
- 「ないと困る」
- 「これがないから購入しなかった」
は、
同じ意味ではありません。
特に、
「あれば使います」
という発言があっても、
実装すれば本当に使う
とは限りません。
同じように、
「ないと困る」
と言われても、
実際の購入・継続・解約に影響しているとは限りません。
発言と実際の行動は、
分けて整理します。
実際の行動も確認する
機能要望だけを見るより、
現在の利用行動まで確認すると判断材料が増えます。
たとえば、
「Gmail連携が欲しい」
という要望があったとします。
そのとき、
- Gmail連携がなくても購入している
- Gmail連携がなくても継続利用している
- 毎回メールを手作業で転記している
- 転記忘れによる情報欠落が起きた
では、
それぞれ意味が違います。
要望があっても必須機能とは限らない
複数の有料利用者から要望が出ていても、
その機能なしで購入・継続しているなら、
「現在のサービスを使うための必須条件ではない」
という事実もあります。
これは、
「だから作らなくてよい」
という意味ではありません。
単に、
「欲しい」
と
「なければ利用できない」
を分けて考える材料になります。
実害がある場合は重要な材料になる
一方で、
転記を忘れて、
最新情報が整理結果から抜けた
というような実際の問題が起きている場合、
単なる「便利そう」という発言より強い材料になります。
ただし1件の事例から、
「多くの顧客にも同じ問題が起きている」
と一般化することはできません。
事例があることと、
広く起きていることは別です。
顧客が出した解決策が最適とは限らない
顧客から、
「Slack連携を作ってほしい」
と言われたとします。
背景を聞くと、
Slackから必要な情報を探して、
サービスへコピーする作業が面倒
だったとします。
この場合、
本当に解決したいことは、
Slack連携そのものではなく、情報探索・転記負担の削減です。
Slack連携は、
その課題を解決する候補の一つです。
しかし、
顧客がSlack連携と言った
↓
Slack連携が唯一の解決策
とは限りません。
まず、
- 現在何をしているのか
- どの作業が負担なのか
- どこで失敗しているのか
- 何を減らしたいのか
を整理した方が、
解決方法の選択肢を狭めすぎずに済みます。
複数人から同じ要望が出ても、すぐ一般化しない
「3人から同じ要望が出た」
という情報は、
もちろん無意味ではありません。
しかし、
3人が言った
=多くの顧客に必要
とは言えません。
確認したいのは、
単に機能名が同じかではなく、
背景課題も同じか
です。
たとえば、
3人とも「Slack連携」を希望していても、
- A:毎回の検索・コピーが面倒
- B:複数チャンネルの転記が多い
- C:転記忘れを防ぎたい
という違いがあるかもしれません。
大きく見れば、
Slackからの手動転記負担
という共通課題はあります。
しかし、
必要な仕様まで同じとは限りません。
共通課題と共通仕様は別です。
反対事例も残しておく
要望分析では、
欲しいと言った人だけを見ると判断が偏ります。
たとえば、
「Slack連携があると便利そう」
と言いながら、
「自分はメール中心なので、今のままで困っていない」
という利用者もいるかもしれません。
この人を、
Slack連携希望者1人
として単純に数えてしまうと、
実際の需要を強く見積もりすぎます。
反対に、
- 現在の方法で困っていない
- その機能を使う予定がない
- 別の運用で問題なく利用している
という事例も残しておきます。
反対事例は、
仮説を見直し、
「どんな人に必要なのか」という条件をより正確にする材料になります。
要望を分析した後に、機能追加を判断する
背景課題が整理できたら、
次に初めて、
「この機能を作るべきか?」
を考えます。
ここでは、
- 背景課題は確認できているか
- 実際の行動に影響しているか
- 既存機能で対応できないか
- 他の方法で解決できないか
- 対象になる利用者は誰か
- 開発・保守負荷はどの程度か
- 小さく試せるか
- まだ重要な未確認事項が残っていないか
を見ます。
要望数だけでは決めない
たとえば、
ダークモードが欲しい
という要望が5件あったとします。
それだけで、
「5件もあるから作ろう」
と決めるのは早いです。
もし、
- 多くが「見た目が好き」という発言
- 現在の画面で具体的に困った経験はない
- 購入・継続への影響も確認できない
- 実装範囲は広い
- 今後の保守負荷も増える
のであれば、
まず課題の強さを確認した方がよい場合があります。
一方、
- 利用のたびに発生する作業負担がある
- 実際に情報欠落が起きている
- 現機能では解消できない
- 小さく試せる
のであれば、
限定的に追加して試す判断もあり得ます。
機能を追加するか迷った場合は、
「機能追加判断」のAIフローで、
今追加する / 小さく追加する / 先に検証する / 代替案で対応する / 保留する / 追加しない
のどこに当てはまるか整理できます。
「作る・作らない」の2択にしない
機能追加を考えるとき、
作る
作らない
だけで考えると、
判断が極端になりやすくなります。
実際には、
- 今追加する
- 小さく追加する
- 先に検証する
- 代替案で対応する
- 保留する
- 追加しない
という選択肢があります。
たとえば、
必要性はある程度確認できているものの、
正式実装には不確実性が残る場合、
一部利用者だけに限定版を提供する
という方法もあります。
逆に、
要望はあるものの背景課題がほとんど確認できていない場合は、
まず実装せず、
具体的な困りごとを確認する
方が適切なこともあります。
開発が簡単だから作る、も避ける
機能追加では、
「簡単に作れそうだから、とりあえず追加する」
という判断も起こりがちです。
しかし、
開発負荷が低いことと、必要な機能であることは別です。
一方で、
開発が大変だから作らない
とも限りません。
判断するときは、
課題・証拠の強さ
×
開発・運用・保守負荷
を合わせて見ます。
特に、
- 実装範囲が広い
- 継続的な保守が必要
- 外部サービスへ依存する
- 既存ユーザーへの影響が大きい
場合は、
より強い根拠を確認してから進めた方が安全です。
機能要望から追加判断までの流れ
機能要望を受け取ったら、
次の順番で整理すると判断しやすくなります。
1. 要望をそのまま記録する
まず、
「何が欲しいと言われたか」
を解釈せず残します。
2. 背景課題を確認する
次に、
「なぜそれが欲しいのか」
を確認します。
3. 現在行動を見る
- 今はどう対応しているか
- どのくらい頻繁に起きるか
- 何か実害が起きているか
を整理します。
4. 求めている結果を整理する
機能名ではなく、
「何を減らしたいのか」
「どうなりたいのか」
を見ます。
5. その機能でなければならないか確認する
顧客が出した解決方法を、
唯一の方法とは決めつけません。
6. 実装するかを別途判断する
最後に、
- 課題
- 行動証拠
- 対象範囲
- 代替手段
- 開発負荷
- リスク
- 未確認事項
を合わせて、
機能追加を判断します。
まとめ
顧客から機能要望が出たとき、
そのまま開発仕様に変える必要はありません。
重要なのは、
「何を作ってほしいと言われたか」ではなく、
「なぜそれが必要なのか」を整理することです。
特に、
- 要望と背景課題を分ける
- 同じ機能名でも背景の違いを見る
- 発言と実際の行動を分ける
- 「便利そう」と実利用需要を分ける
- 顧客が出した解決策を最適解と決めつけない
- 反対事例も残す
- 複数人の発言をすぐ市場全体へ一般化しない
- 開発負荷も合わせて判断する
ことが重要です。
機能要望を整理するときは、
機能要望分析。
その結果を使って、
実際に追加するか判断するときは、
機能追加判断。
と分けると、
「顧客に言われたから作る」
ではなく、
確認できた課題と行動をもとに機能追加を判断する
流れを作りやすくなります。
