出店前の現地調査では何を見る?|人通り・競合・導線を確認する方法
はじめに
出店候補地をある程度絞ったあと、
「実際に現地では何を見ればいい?」
「人通りを見れば十分?」
「競合店はどこまで調べればいい?」
と迷うことがあります。
現地調査というと、
候補物件の前に立って、
「人が多そう」
「競合も混んでいる」
「ここなら売れそう」
と感覚的に確認して終わってしまうこともあります。
しかし、
出店判断に使うなら、
何を確かめたいのかを先に決めてから観察する
ことが重要です。
たとえば、
- 平日日中に会社員との接点があるか
- 午後にPC作業需要があるか
- 駅から物件まで人が流れているか
- 競合満席時に別の店を探す人がいるか
- 2階店舗まで人が上がっているか
など、
候補地によって確認すべきことは異なります。
この記事では、
- 現地調査前に整理すること
- 物件前で見ること
- 駅からの導線で見ること
- 競合店で確認すること
- 時間帯をどう分けるか
- 複数候補をどう公平に比較するか
- 現地調査だけでは判断できないこと
を整理します。
現地調査は「何となく見る」前に仮説を決める
現地調査で最初に決めたいのは、
何を確認するために現地へ行くのか
です。
たとえば、
平日日中に会社員需要がありそうか確認したい
という仮説と、
2階店舗まで人が上がるか確認したい
という仮説では、
見る場所も項目も変わります。
そのため、
とりあえず駅前から歩いてみる
だけではなく、
- 現在分かっていること
- まだ分かっていないこと
- 出店判断を変える可能性があること
を先に分けます。
確認済みの事実と仮説を分ける
たとえば、
平日昼に人通りがあった
は観察した事実です。
一方、
平日昼なら会社員需要がある
は解釈です。
同じように、
競合店でPC利用者を見かけた
は事実ですが、
この地域ではPC作業カフェの需要が強い
とまでは言えません。
現地調査では、
観察したこと
と、
そこから考えられること
を分けて記録することが重要です。
現地で直接確認できること
現地調査では、
実際の行動や状態を確認できます。
たとえば物件前なら、
- 通行人数
- 通行方向
- 1人通行かグループか
- 立ち止まる人がいるか
- 入口方向を見る人がいるか
- 入口へ近づく人がいるか
- 駅側から物件前を通る人がいるか
などです。
競合店なら、
- 入店者
- 退店者
- 空席の有無
- 行列
- 店外待ち
- 1人利用
- PC利用
- 読書・勉強に見える利用
- テイクアウト
などを確認できます。
ただし、
これらはあくまで、
観察した日時に、その状態があった
という情報です。
現地で見えても断定できないこと
人の行動を見ても、
その理由までは分からないことがあります。
たとえば、
スーツ姿の人が物件前を通った
としても、
その人が会社員かは確定できません。
PCバッグを持っていたからといって、
カフェでPC作業したい人
とも限りません。
そのため、
- 会社員と思われる
- 学生と思われる
- 勤務者らしい
- PC利用目的に見える
などは、
推定として記録します。
物件前では何を見る?
物件前では、
人が通るか
だけを見るのでは不十分です。
見るべきなのは、
その人流が店舗との接触につながり得るかです。
通行人数
まず、
- 何人通ったか
- どちらからどちらへ移動したか
を記録します。
ただし、
人通りが多い=来店する
ではありません。
通行量は、
店舗との接触機会を考える材料です。
通行方向
たとえば駅近物件なら、
- 駅から商業施設へ向かう流れ
- 商業施設から駅へ戻る流れ
- オフィス方面
- 住宅方面
などを見ることで、
どの移動と物件が接しているか確認できます。
物件への反応
候補物件の前で、
- 入口を見る
- 看板を見る
- 歩く速度を落とす
- 立ち止まる
- 入口方向へ寄る
といった行動も記録できます。
ただし、
看板を見た=入店したい
とは判断できません。
認知可能性を考える材料として扱います。
駅から物件までの導線を見る
「駅徒歩3分」という情報だけでは、
実際の導線は分かりません。
駅から近くても、
人が別の方向へ流れていることがあります。
反対に、
少し駅から離れていても、
- 住宅への帰宅導線
- オフィスとの往来
- スーパー
- 商業施設
- 学校
などへの移動と重なっている場合があります。
そのため現地では、
駅から物件まで実際に人がどう動いているか
を確認します。
導線上で確認したいこと
たとえば、
- 駅側から物件方向へ進む人
- 物件手前で別方向へ曲がる人
- 物件前を通過する人
- 周辺施設から物件方向へ進む人
などです。
地図上では主要動線に見えても、
現地では人が別の道を使っていることもあります。
競合店では何を見る?
競合調査では、
店の数だけでなく、
いつ・どんな利用が起きているか
を見ます。
たとえば、
- 空席があるか
- 満席に近いか
- 行列があるか
- 1人利用がいるか
- PC利用があるか
- テイクアウトがあるか
- 長時間利用らしい客がいるか
などです。
競合の混雑=自店需要ではない
競合が混雑していると、
この地域は需要が強い
と考えたくなります。
実際、
その時間帯にカフェ利用が存在する材料にはなります。
しかし、
競合が満席
=新しい店にも客が来る
とは限りません。
競合店そのものが強い可能性もあります。
そのため、
混雑状態だけでなく、
- 満席を確認して帰る人
- 店外で待つ人
- 周辺を見回す人
- 別の店舗へ移動する人
なども観察すると、
より判断材料が増えます。
それでも、
その人が候補店舗へ来る
ことまでは確認できません。
PC作業需要はどう見る?
PC作業向けのカフェを考えているなら、
競合店で、
- PC
- タブレット
- ノート
- 書籍
を使っている1人客がいるかを確認できます。
複数の時間帯や店舗で、
PC利用者が繰り返し見られるなら、
周辺でPCを使える場所が利用されている
ことを示す材料になります。
ただし、
PC利用者がいる
=新しいPC作業向けカフェへの需要がある
とは限りません。
既存店舗で需要が満たされている可能性もあります。
朝・昼・午後・休日で見るものを変える
店舗の利用目的は、
時間帯によって変わることがあります。
そのため、
全部を一つの「人流」としてまとめず、
時間帯を分けて考えます。
出勤前
確認したいのは、
- 駅方面への移動
- オフィス方面への移動
- 1人通行
- テイクアウト利用
- 競合店への短時間入店
などです。
出勤前利用を想定しているなら、
朝の人流を昼の観察だけで判断できません。
ランチ前後
確認したいのは、
- オフィス勤務者らしい人の移動
- 飲食店への入退店
- カフェの混雑
- 短時間休憩
- テイクアウト
などです。
平日午後
PC作業や読書を想定するなら、
- 1人客
- PC利用
- 読書・勉強
- 空席状況
- 長めの滞在
などを確認します。
休日の日中
平日とは利用者構成が変わる可能性があります。
- 1人利用
- グループ
- 買い物客
- 待ち合わせ
- 読書
- 商業施設との往来
などを確認できます。
具体的な調査時間を勝手に決めない
現地調査では、
何分見ればいい?
何日調査すればいい?
という疑問が出ます。
しかし、
30分×3日なら十分
と一律に決めることはできません。
必要な調査量は、
- 調査目的
- 時間帯
- 候補数
- 人流の変動
- 店舗の投資規模
- 判断に必要な精度
などによって変わります。
まず、
- 朝
- ランチ前後
- 平日午後
- 休日の日中
など、
確認すべき時間帯を決めます。
そのあと、
利用できる時間や候補数に合わせて調査量を決めます。
「何人通れば十分?」に共通の答えはない
通行人数についても、
100人以上なら有望
のような共通基準はありません。
必要な通行人数は、
- 必要売上
- 客単価
- 入店率
- テイクアウト比率
- 席数
- 回転
- 再来店
などによって変わります。
そのため、
現地調査ではまず人流を測り、
必要な売上条件と結び付けられる材料を取る
ことを目的にします。
競合の混雑率にも共通の合格基準はない
同じように、
競合が8割埋まっていれば需要あり
といった基準も、
根拠なしには置けません。
10席の店と100席の店では、
同じ80%でも意味が違います。
営業時間、
回転率、
客単価、
利用目的も違います。
そのため、
混雑しているかどうか
だけでなく、
- どの時間帯か
- どんな利用者か
- 待ちが発生しているか
- 入店見送りがあるか
などを記録します。
複数候補を比べるなら条件を揃える
候補A、B、Cを比較する場合、
調査条件が違えば単純比較できません。
たとえば、
Aは平日昼に2回
Bは平日昼に1回
Cは休日に1回
では、
Aが一番人が多かった
とは判断できません。
曜日、時間帯、回数が違うからです。
揃えたい条件
複数候補を比較するなら、
可能な範囲で、
- 平日・休日の区分
- 時間帯
- 観察時間
- 観察回数
- 通行人数の数え方
- 通行方向
- 1人・グループの分類
- 競合混雑の記録方法
- PC利用の記録方法
を揃えます。
これによって、
候補間の違いを比較しやすくなります。
既存の調査は捨てなくてよい
すでに候補Aだけ2回見ていたとしても、
その情報を捨てる必要はありません。
ただし、
他候補と同条件で実施した本調査
とは分けます。
既存結果は、
事前確認
として残しておきます。
同じ条件で見られなかった結果は直接比較しない
どうしても、
- Aは晴れ
- Bは雨
- Cはイベント開催日
など、
条件がずれる場合があります。
その場合は、
条件が違う結果
として残します。
無理に横並びにしないことが重要です。
0人と「見ていない」は違う
現地調査では、
0
と、
未確認
を分ける必要があります。
たとえば、
PC作業客0人
は、
観察したが確認できなかった
という結果です。
一方、
PC作業客:未確認
は、
そもそも調べていない状態です。
この二つを同じ「0」として扱うと、
候補比較を誤ります。
候補固有の項目は追加してよい
公平に比較するからといって、
全候補で完全に同じ項目しか見てはいけないわけではありません。
たとえば、
- A・B:1階路面
- C:2階
なら、
Cでは追加で、
- ビル前を通る人
- 建物へ入る人
- 2階へ上がる人
- 看板を見る人
- 共用入口への接近
などを見る価値があります。
これは不公平ではありません。
共通比較項目と固有項目を分ける
重要なのは、
Cだけに追加した2階到達率
を、
A・Bの入口接近率
と同じ数字として直接比較しないことです。
共通項目は共通項目。
物件固有リスクは固有項目。
と分けて扱います。
2階物件は「上がるまで」を分解して見る
2階物件の場合、
人通りがあるか
だけでは不十分です。
たとえば、
- ビル前を通る
- 看板を見る
- 建物へ入る
- 階段・エレベーターへ向かう
- 2階へ上がる
- 店舗前まで来る
という段階があります。
どこで人が減っているのかを見ることで、
「2階だからダメ」という一括判断を避けられます。
記録フォーマットを決めておく
現地調査は、
あとから比較できる形で記録することが重要です。
たとえば、
- 観察日
- 曜日
- 平日 / 休日
- 時間帯
- 開始・終了時刻
- 観察地点
- 実際の観察時間
- 天候
- 通行人数
- 通行方向
- 1人 / グループ
- 競合混雑
- PC利用
- 特記事項
などです。
現地で見ながら毎回自由記述すると、
後で比較しにくくなります。
推定情報には印を付ける
たとえば、
会社員と思われる
という分類は、
事実ではなく推定です。
そのため、
- 確認できた数値
- 観察した状態
- 推定属性
- 未確認
を分けて記録すると、
後の分析がしやすくなります。
現地調査だけでは確認できないこと
現地調査は有効ですが、
万能ではありません。
たとえば、
- 新しい店を利用したいか
- いくらなら利用するか
- Wi-Fiや電源が店選びの決め手か
- 何回来店するか
- 競合店から乗り換えるか
は、
通行人を見ているだけでは分かりません。
必要なら、
インタビューやアンケートなど別の調査が必要です。
売上・利益も現地調査だけでは分からない
人通りが多くても、
月商○万円を作れる
とは判断できません。
売上には、
- 客単価
- 入店率
- 注文構成
- 回転
- テイクアウト
- 再来店
などが関係します。
利益ならさらに、
- 賃料
- 人件費
- 原価
- 水道光熱費
- 初期投資
も必要です。
つまり、
現地調査は出店判断の一部です。
現地調査の目的は「出店OK」を出すことではない
現地調査の結果、
人が多かったからGO
とするのは早すぎます。
現地調査でできるのは、
立地に関する不確実性を減らすこと
です。
たとえば、
駅から本当に人が流れている
平日午後にも1人利用がある
競合でPC利用が繰り返し確認できた
2階まで一定の移動が存在する
といった情報を増やします。
そのうえで、
他の情報と組み合わせて判断します。
現地調査後に確認したいこと
現地調査が終わったら、
- どの仮説を支持する材料が増えたか
- どの仮説は弱まったか
- まだ分からないことは何か
- 候補間で比較可能になったことは何か
- 追加調査が必要なことは何か
を整理します。
現地調査で答えを出すのではなく、
次の判断を進めるために使います。
WorkPaletteで出店前の現地調査を設計する
現地調査は、
調べる前に設計しておかないと、
とりあえず現地へ行ったけれど、
結局何が分かったのか分からない
という状態になりやすくなります。
WorkPaletteの「出店前現地調査設計」では、
- 出店条件と未確認仮説を整理
- 現地で確認できる仮説を選ぶ
- 観察地点・対象を整理
- 曜日・時間帯・観察項目を設計
- 記録方法・比較方法を整理
- 調査結果の使い方を整理
という流れで、
現地調査を組み立てます。
また、
- 調査時間
- 調査回数
- 必要人数
- 合格基準
- 必要通行人数
など、
根拠のない数値を勝手に設定しません。
複数候補がある場合は、
共通条件を揃えながら、
2階物件など候補固有のリスクも別途確認できます。
まとめ
出店前の現地調査では、
人通りが多いかを見る
だけでは足りません。
重要なのは、
出店判断でまだ分からないことを、現地で確かめる
ことです。
そのために、
- 確認したい仮説を決める
- 物件前を見る
- 駅からの導線を見る
- 競合を見る
- 時間帯を分ける
- 観察条件を記録する
- 複数候補では条件を揃える
- 推定と事実を分ける
- 未確認と0件を分ける
という形で調査します。
そして、
人流が多かったから出店する
ではなく、
現地調査によって、どの不確実性が減ったか
を見ることが重要です。
現地調査は、
出店場所を感覚で決めるためのものではありません。
判断に必要な証拠を、現実の場所から集めるための工程
として設計すると、
その後の候補地比較や出店判断にもつなげやすくなります。
