この場所にお店を出して大丈夫?|出店前に需要・競合・立地・採算を調べる方法
はじめに
「この駅なら人が多いから、
カフェを出しても集客できそう」
「競合店が混んでいるから、
まだ出店する余地がありそう」
店舗を出す場所を考えるとき、
こうした情報は重要な判断材料になります。
ただし、
- 人通りが多い
- 競合店が混雑している
- 新しい店が増えている
- 駅から近い
といった情報だけで、
「出店すれば集客できる」と判断することはできません。
出店を考えるときには、
- その地域に需要がありそうか
- 想定する顧客が実際にいるか
- 競合や代替手段は何か
- 候補物件まで顧客が来るか
- 必要な売上を作れるか
- その売上で採算が合うか
を分けて考える必要があります。
この記事では、
店舗を出す前に確認したいポイントを、
需要・競合・立地・採算の順に整理します。
「人が多い場所」と「集客できる場所」は違う
出店候補地を探すとき、
まず気になるのが人の多さです。
駅の利用者が多い。
商業施設がある。
オフィスが多い。
住宅が多い。
こうした条件は、
顧客と接点を持てる可能性を考える材料になります。
ただし、
人が多い=自分の店に来る人が多い
とは限りません。
駅利用者数だけでは分からない
駅の利用者が多くても、
その人たち全員が候補物件の前を通るわけではありません。
たとえば、
- 改札を出ずに乗り換える
- 反対側の出口を使う
- 店舗とは違う方向へ向かう
- 通勤途中で立ち止まらない
といったこともあります。
確認したいのは、
駅全体の利用者数だけではありません。
候補地に対して、
- どの方向から人が来るか
- どの時間帯に通るか
- どんな人が通るか
- 立ち寄れる動線になっているか
まで見る必要があります。
人通りがあっても入店するとは限らない
候補物件の前を多くの人が通っていても、
そのまま集客数にはなりません。
店舗を利用するまでには、
通行する
↓
店舗を認識する
↓
興味を持つ
↓
入店する
↓
購入する
という段階があります。
人流は重要ですが、
あくまで入口の情報です。
競合店が混雑していたら需要があると言える?
出店調査では、
周辺の競合店を見ることも重要です。
たとえばカフェを出したい地域で、
既存のカフェが平日午後によく混雑しているとします。
これは、
その店舗・その時間帯でカフェを利用する人が存在する
という材料にはなります。
何も利用されていない地域より、
需要を考える材料は強くなります。
しかし、
既存店が混んでいる=新しい店にも客が来る
とは限りません。
競合店が混雑する理由は一つではない
既存店が選ばれている理由には、
- 駅から近い
- ブランドを知っている
- 価格が安い
- Wi-Fiや電源がある
- 席数が多い
- 待ち合わせに使いやすい
- ポイントが貯まる
などがあります。
そのため、
混雑そのものだけでなく、
なぜその店が利用されているのか
まで確認することが重要です。
満席=大量に売れているとも限らない
カフェの場合、
長時間滞在する人が多ければ、
店内は混雑していても会計数が多いとは限りません。
特に、
- PC作業
- 勉強
- 読書
- 打ち合わせ
を想定する店舗では、
利用者数だけでなく滞在時間も重要です。
「人がいること」と、
「十分な売上になること」は分けて考えます。
競合が多い場所は避けるべき?
競合店が多いと、
「もう店が多すぎるのでは」と感じることがあります。
一方で、
「これだけ店があるなら需要も大きいのでは」
とも考えられます。
どちらも可能性があります。
競合が多いことには二つの意味がある
競合が多い地域では、
- カフェを利用する人が多い
- 商業地として人が集まっている
- 店舗利用の習慣がある
可能性があります。
一方で、
- 顧客獲得競争が強い
- 価格競争になっている
- 大手チェーンが強い
- 新規店が選ばれにくい
可能性もあります。
そのため、
競合が多い=良い市場
とも、
競合が多い=出店すべきではない
とも決められません。
カフェなら「カフェ以外」も競合になる
競合調査では、
同じ業種だけを見ると見落としが出ます。
たとえば、
PC作業ができるカフェ
を考えている場合、
競合はカフェだけではありません。
利用目的が同じものを探す
候補には、
- ファストフード
- ファミリーレストラン
- コワーキングスペース
- フードコート
- ベーカリー
- ホテルラウンジ
などもあります。
顧客は、
カフェに行きたい
と考えているとは限りません。
「少し仕事をしたい」
「時間をつぶしたい」
「休憩したい」
「軽く食べたい」
という目的に対して、
複数の選択肢を比較しています。
つまり、
業種ではなく利用目的から競合を見ることも重要です。
新しい店が増えていたら市場は伸びている?
地域を調べていると、
「最近カフェが3店舗オープンしている」
といった情報が見つかることがあります。
これは出店動向を知る材料になります。
ただし、
新規出店が多い=市場が成長している
とは限りません。
閉店も確認する
たとえば、
- 新規出店3店
- 閉店2店
だったとしても、
単純に「1店舗増えた」と考えるのは危険です。
調査が地域全体を網羅しているとは限らないからです。
また、
閉店理由も重要です。
閉店には、
- 建物の建て替え
- 移転
- 契約終了
- 人員不足
- オーナーの事情
- 採算悪化
などさまざまな理由があります。
閉店したという事実だけで、
「需要がなかった」と判断することはできません。
候補物件では何を見る?
地域全体の需要がありそうでも、
実際に出店する物件が悪ければ集客できないことがあります。
出店判断では、
地域評価と物件評価を分けます。
駅からの距離
「徒歩3分」などの距離は分かりやすい指標です。
ただし、
同じ徒歩3分でも条件は変わります。
- 駅から自然に歩く方向か
- 大きな道路を渡る必要があるか
- 坂があるか
- 建物が見えるか
- 途中に強い競合があるか
などを見る必要があります。
視認性
通行人がいても、
店舗の存在に気付かなければ入店にはつながりません。
確認したいのは、
- 1階か
- 看板が見えるか
- 入口が分かりやすいか
- 道路から店内が見えるか
- 建物の奥に入っていないか
などです。
時間帯別に見る
昼に人通りが多くても、
朝や夕方は少ないことがあります。
逆に、
通勤時間だけ人が多いこともあります。
想定する営業時間に合わせて、
- 朝
- 昼
- 午後
- 夜
- 平日
- 休日
を分けて確認します。
必要な来店数を先に計算する
出店判断では、
「人が来そう」という感覚だけでなく、
何人来る必要があるのか
を先に整理しておくと判断しやすくなります。
たとえば、
- 必要月商:500万円
- 想定客単価:1,000円
なら、
500万円 ÷ 1,000円
=月5,000会計
です。
つまり、
想定客単価を維持できるなら、
月5,000会計が必要です。
営業日数が決まっていなければ1日客数は出せない
ここで注意したいのが、
営業日数です。
月5,000会計だからといって、
勝手に30日営業などを前提にしてはいけません。
営業日数をD日とすると、
1日必要会計数
=5,000 ÷ D
です。
営業日数が決まってから、
具体的な1日必要客数を計算します。
席数だけで処理能力は判断できない
「32席あるから、
十分な人数を入れられそう」
と考えることもあります。
しかし、
席数だけでは判断できません。
滞在時間が大きく影響する
同じ32席でも、
- 平均30分利用
- 平均2時間利用
では、
1日に対応できる人数が大きく変わります。
特にPC作業や読書を想定するカフェでは、
長時間利用が増える可能性があります。
そのため、
- 平均滞在時間
- ピーク時間
- テイクアウト比率
- 1人席の数
- 追加注文
- 席の使われ方
なども確認します。
PC作業客はプラスにもマイナスにもなる
PC作業客は、
平日午後などの需要を作る可能性があります。
一方で、
長時間滞在によって席回転が下がる可能性もあります。
つまり、
PC作業客が多い=売上が安定する
とは限りません。
重要なのは、
- どのくらい滞在するか
- いくら注文するか
- 追加注文があるか
- 混雑時間にも長時間利用するか
です。
賃料比率だけで採算は判断できない
たとえば、
- 月商500万円
- 賃料85万円
なら、
85万円 ÷ 500万円
=17%
と計算できます。
これは一つの確認材料です。
しかし、
賃料比率17%だから大丈夫
とは言えません。
売上から引かれる費用は賃料だけではない
店舗経営では、
- 原価
- 人件費
- 水道光熱費
- 決済手数料
- 広告費
- 通信費
- 消耗品
- 保険
- 税金
- 借入返済
などがあります。
そのため、
売上 − 賃料
を利益として扱うことはできません。
必要月商が、
- 目標売上なのか
- 損益分岐点なのか
も分けて考える必要があります。
初期費用をかけてよいかは売上だけでは決められない
出店には、
大きな初期費用がかかることがあります。
たとえば1,500万円を投資する場合、
重要なのは、
月商がいくらか
だけではありません。
初期費用を回収するのは、
売上ではなく、
費用を差し引いた後の利益やキャッシュフローです。
そのため、
- 初期費用の内訳
- 営業利益
- 運転資金
- 借入返済
- 回収期間
などを確認する必要があります。
需要がありそうでも、
採算が合わなければ出店判断は変わります。
出店判断は「GOかNGか」だけではない
情報が十分でない段階では、
すぐに出店するか諦めるかの二択にする必要はありません。
判断を段階に分ける方法があります。
GO
現在確認できている情報から、
限定された次工程へ進む合理性がある状態です。
ただし、
「成功する」「儲かる」という意味ではありません。
TEST
重要な仮説が残っているため、
大きな投資の前に追加検証する状態です。
出店調査では、
この状態になることが多いでしょう。
HOLD
可能性は否定できないものの、
追加投資へ進む根拠がまだ弱い状態です。
DROP
重大な阻害要因が確認され、
現条件で追加投資を進める合理性が低い状態です。
TESTなら何を確認する?
出店候補地に可能性がありそうでも、
まだ本契約に進めない場合は、
判断を変える可能性が高い情報から確認します。
たとえば、
- 候補物件前の時間帯別人流
- 通行人の属性
- 競合店の時間帯別利用状況
- 入店を諦めている人の有無
- 想定顧客へのインタビュー
- 客単価の実現性
- 平均滞在時間
- テイクアウト比率
- 商品別原価
- 人件費
- その他固定費
- 初期費用の内訳
などです。
いきなり大きな投資をするのではなく、
判断に必要な証拠を増やしていきます。
WorkPaletteで出店候補エリアを整理する
出店候補地を調べると、
情報量が多くなりがちです。
人流、
競合、
新規出店、
閉店、
物件、
価格、
売上、
費用。
これらを一度に考えると、
「なんとなく良さそう」という判断になりやすくなります。
WorkPaletteの「出店候補エリア評価」では、
次の流れで整理できます。
- 出店条件・判断条件を整理する
- 地域需要の証拠を整理する
- 競合・代替手段を整理する
- 出店・閉店・店舗入れ替わりを整理する
- 立地・集客可能性を整理する
- 採算成立条件を整理する
- 出店判断と追加検証をまとめる
重要なのは、
単に「出店できそうか」を答えることではありません。
何が確認できていて、
何がまだ仮説なのか
を分けることです。
そのうえで、
GO・TEST・HOLD・DROPのどこにいるかを整理すると、
次に何を確認すべきかが見えやすくなります。
まとめ
出店候補エリアを評価するときは、
「人が多い」「競合が混んでいる」といった一つの情報だけで判断しないことが重要です。
確認したいのは、
- 地域にどんな需要がありそうか
- 想定顧客と接点があるか
- 競合・代替手段は何か
- 新規出店・閉店にどんな動きがあるか
- 候補物件まで人が来るか
- 必要な来店数はいくつか
- 席数や滞在時間で処理できるか
- 売上と費用のバランスが合うか
です。
出店に有利な材料が多くても、
それだけで成功を保証することはできません。
逆に、
競合が多いからといって、
出店を諦める必要があるとも限りません。
大切なのは、
出店できそうか
ではなく、
出店判断を進めるための証拠が、どこまで揃っているか
を確認することです。
